世界一のチーズから、世界一の村づくりへ ブルーチーズドリーマー・伊勢昇平さん

旭川の住宅会社・アーケン株式会社は「建築」「住宅会社」の目線や立場ではなく、顧客のライフスタイルを第一に、趣味、仕事、食、子育てなどを深く理解することを大切にしています。このブログでは、さまざまな形でご縁をいただいた、旭川圏で素敵な活動をされている方々を連載でご紹介しています。第2回は伊勢昇平さんです。

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マイナス30度を下回ることはザラ。真冬の朝、ニュースで「日本で一番寒い」と度々取り上げられるのが、旭川市北部の江丹別です。豊かな自然が広がり、酪農や蕎麦の生産が盛ん。一方で人口は「限界集落」と呼ばれるほど少なく、商店もありません。ですが今、この地に移住者が相次いでいます。仕掛け人は、全国区の人気を誇る「青いブルーチーズ」を作る伊勢さん。アーケン代表の藤原立人とは5年以上のご縁で、家づくりにとどまらず、村づくりにも一緒に携わっています。伊勢さんの原動力や青写真に、藤原が迫りました。

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藤原「実家が酪農の『伊勢ファーム』ですが、チーズ作りは小さいころから考えていたんですか?」

伊勢「全く考えていませんでした。牛が好きとか、継ぎたいとかいう思いは皆無でした。自分のコンプレックスを消し去るために、『この牛乳で世界一のチーズをつくろう!』と高校2年の時に思ってからですね」

藤原「きっかけはコンプレックスなんですね」

伊勢「江丹別は大嫌いでした。旭川のまちなかにある私服の高校に進みましたが、田舎オーラ全開の見た目で、いじられました。裕福ではなく、『江丹別で生まれたからだ』と思い込んでいました。あの悔しい気持ちががなければ、今ここまでやっていませんね」

藤原「転機は何でしたか?」

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伊勢「『海外に出たら状況を変えられる』『世界で活躍できる人間に』と考えて、高校2年から英会話を習ったんですね。その先生が熱血で、『実家の牛乳で世界一のチーズを作ったら、それも世界で活躍することになる』と言ってくれて、『これだ!』と。帯広畜産大学に進んで、フランスにチーズ留学しました」

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藤原「このチーズを食べられるのは、英会話の先生のおかげなのかもしれませんね...。2011年にブルーチーズを世に送り出して、国産食材として初めてANAとJALの国際線ファーストクラスで提供されたり、生産が追いつかないほどオンラインショップが盛況だったり、すごい人気をキープしています」

伊勢「実家の質の良い牛乳や、チーズ市場に隙間があったという前提はありますが、ブルーチーズはコンプレックス型人間の自分を満たすものです。それが想像以上に多くの人が喜んでくれて、江丹別に来てくれました。チーズでここまで雰囲気が変わるなら、地域を変えられるなと思いました」

藤原「嫌いだった江丹別に目が向いたんですね」

伊勢「ヨーロッパのチーズは、商品名に地域の名前がついています。コンプレックスがあったので、『江丹別』はどうしても出したかった。そして、チーズをベースに、江丹別を『世界一の村』にしようと思ったんです。ここほど、やりたいことに集中できる場所はないので」

藤原「今や『やりたいこと』がある、いろいろな人が集まっています」

伊勢「何もない所に人が集まる場ができたら、面白いものが生まれます。地域の反応も変わってきます。なので、『やる場所』を探している人に声をかけまくりました」

藤原「その第一弾が、アーケンがお世話になったイタリアンレストランChirai(チライ)ですね」

伊勢「ブルーチーズのキッシュや、チーズケーキ、伊勢ファームの乳飲み豚のパテドカンパーニュが人気です。チライのオーナーを含め、ほとんどの人にとって、やりたいことで生活できたら、やらない理由はないと思っています。なので、経営を成立させるため全力でサポートします」

藤原「チライのインパクトは大きいですね」

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伊勢「江丹別にとって革命でした。アーケンさんに、移住したスタッフが住むタイニーハウスも建ててもらいました。2021年4月にはチライと共同出店で、道産の穀物にこだわったパン屋「ブーランジェリーaman(アマン)」がオープンしました。遠くからも、ここだけのパンを求めてお客さんがたくさん来てくれました。藤原さんもスタッフに入ってもらっている『熱中小学校』では、チライが食事会場です」

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藤原「熱中小学校は各分野の全国の第一人者が来て、地域で学び合います。私も可能性を感じて、スタッフをしています。この『江丹別分校』で人が人を呼んでいます」

伊勢「僕が、英会話の先生の一言で変わったように、きっかけ作りは大事だと思っています。講演会で1回聞いて『すごい』で終わるのではなく、継続的にすごい方々と話して、『やろう』と行動に移せます」

藤原「私も毎回授業で刺激を受けていますし、生徒も先生も垣根なく食事したり、江丹別の森で遊んだり、関係を深めていけるのが最高です。いろんな動きが生まれていますね」

伊勢「江丹別の森で林業をする若者がいたり、事務局メンバーとして移住を希望する女性が現れたり。いま江丹別では毎月、新しい事業が立ち上がってるような感覚です」

藤原「雇用も生まれて、まさに村づくりですね」

伊勢「誰かが動いた結果がダイレクトに見えるのは、小さい地域の強みです。東京の1人と、江丹別の1人とでは、地域へのインパクトが違います。でも江丹別のためとか、人のため、じゃなんです。あくまで、自分のため。レストランができたら、僕の暮らしが豊かになる。事業を起こして楽しそうな人を見たら、僕が楽しい。チーズと一緒で、自分の欲求を満たすためです」

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藤原「それはよく分かります。アーケンの家づくりのゴールは、お客さんに喜んでもらうことだけ。人生で一番大きい買物と言われる住宅で、その満足度を最大限にできれば、私の喜びも最大限にできる。私は坪単価だけを売りにしたり、契約を急がせたりという家づくりに違和感があって、独立してアーケンを立ち上げました。お客さんのために、顔の見える家をつくろうと。当たり前というか自然なことで、新たなチャレンジという意識はないですね」

伊勢「僕も『変わっている』とよく言われますが、王道を行っているつもりです。究極のオンリーワンを目指して良いものをつくり、安売りせず価値を高めて、江丹別を知ってもらう。藤原さんと生き方で共感できるので、江丹別のことも一緒にできています。これからは、アーケンさんにお願いしているサウナ計画が動き始めます。日本一寒い江丹別で、サウナでも世界一を取っていきますよ」

藤原「コンテナも使って、かなり本格的なサウナです」

伊勢「ロビー的な場所でサウナハットを手作りしたり、白樺の樹皮でクラフトをしたり、テラスで森を見たり、冬は雪に飛び込んだり...。2021年夏には完成させたいですね」

藤原「伊勢さんと話していると、どこでも、どんなことでもできる気がしてきます。最近はユーチューバーとしても発信されていますね」

伊勢「江丹別を知らなくても、ブルーチーズやコンテナハウス、限界集落、サウナなら興味のある人はいっぱいいます。YouTubeのチャンネルは、

熱中小学校を含めた『世界一の村をつくろうTV』と

https://www.youtube.com/channel/UCIdwf0FxeAAVY6xGsPGM3hA

『コンテナハウスドリーマー』

https://www.youtube.com/channel/UC0y79zXEXQbW99IuK_OLjCQ


の2本あって、サウナでも作るつもりです。やっていることを全部発信したくなるんですよね。今は宣伝もお金をもらってやれる時代ですし」

藤原「本業のチーズ作りから『やりたい』を重ねてきて、気づけば村づくりへ、という感じがします。意外にも、すべて自然につながっていますね」

伊勢「自分を幸せにするチーズでたくさんの人に喜んでもらうことを続けた結果、江丹別に投資ができて、みんなが幸せになります。僕の中で世界一というのは、到達点ではなく、ワクワクして『ここならやりたいことができる』という状態。その意味では、今も十分世界一で、夢は叶え続けています」

『ブルーチーズドリーマー』伊勢さん公式サイト

https://bluecheese-dreamer.com/ 

『伊勢ファーム』(ショップ「カウ&カーフ」)

〒071-1172

北海道旭川市江丹別町拓北214

営業時間:平日13:00~17:00、土日祝10:00~18:00

電話(0166)73-2148

定休日:火曜、冬季休業

 

『イタリアンレストランChirai(チライ)』

〒071-1173

北海道旭川市江丹別町中央121-1

営業時間:ランチ11:00~(ラストオーダー14:00)、カフェタイム 14:00~15:00、ディナー17:00(ラストオーダー20:00)

定休日:月曜、火曜(月曜が祝日の場合は火曜休み)

電話(0166)76-4747 

公式サイト

https://www.facebook.com/Chirai-%E3%83%81%E3%83%A9%E3%82%A4-Restaurant-Cafe-100849541267470/about/?ref=page_internal 

『ブーランジェリーaman(アマン)』

〒071-1173

北海道旭川市江丹別町中央121-2

営業時間:10:00~15:00(なくなり次第終了)

定休日:月曜

公式サイト https://www.facebook.com/boulangerie.aman 


記事:松本 浩司

写真:村川翔健