タイニーハウスなぜ人気? 旭川公園ゲストハウス―松本浩司さん

旭川の住宅会社・アーケン株式会社は「建築」「住宅会社」の目線や立場ではなく、顧客のライフスタイルを第一に、趣味、仕事、食、子育てなどを深く理解することを大切にしています。このブログでは、さまざまな形でご縁をいただいた、旭川圏で素敵な活動をされている方々を連載でご紹介しています。第5回は、旭川市・永山で「旭川公園ゲストハウス」を運営する松本浩司さんです。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

20211122113558-2b2778277d7589a91aedae2316357a61db30ba5d.jpg

観光客に人気の旭山動物園から車で15分ほど。旭川市永山地区の住宅街に、風変わりな3棟の小屋が並んだゲストハウスがあります。代表の松本さんはこの小屋を「タイニーハウス」と呼びます。定義はさまざまですが、アーケンのもとにも今、「タイニーハウスを建てたい」という相談が次々舞い込んでいます。一体どんな建物なのか...。魅力や可能性について語り合いました。

松本「ゲストハウスの建設では、タイニーハウスとは独立した管理棟の施工や、全体的なサポートで藤原さんにお世話になりました。開業したのは2019年秋でしたが、その時から比べると、タイニーハウスという言葉を聞く機会は増えてきたなと感じます」

藤原「アーケンとして関心の強さを感じたのは、旭川市北部の江丹別地区でタイニーハウスを建ててからでした。『江丹別に移住する女性が単身で暮らす住宅を』というオーダーで作り、YouTubeなどで多くの方に知ってもらえました」

20211122113642-e7926efd53d116c3cea04f8c245e12c53b20f5e2.jpg

松本「おしゃれで贅沢なウッドデッキが印象的です。余計なものを削ぎ落した、高品質でシンプルな住宅ですね」

藤原「間取りはシンプルです。リビング・キッチンで8帖で、ロフトが6帖です。木材を生かし切る、無駄のない構造を心がけました。内外装とも、一般的な住宅と同等のものを使っています。例えば、木に似せた内装材を使う方が安価ですし、狂いも少ない。ただ本物の無垢材は時間が経つほどい味わいが出ます。小さいからといって、素材では妥協したくありませんでした」

松本「小さいからこそ、モノの良し悪しが近くで見えます。心を豊かにするためにも本物を使いたい思いはよく分かります」

藤原「癒しを求めて森の中に小屋を作るとイメージすれば、分かりやすいです。例え1坪でも、自然を楽しんだり、良い時間を過ごしたりする場所なら、空間の質を高める素材にはこだわりたいです」

松本「タイニーハウスというと、車輪がついて移動できる小屋や、トレーラーハウスのようなものを思い浮かべる人が多いですが、文字通り『小さな家』と考えたら、いろんなタイプが考えられますね」

藤原「旭川公園ゲストハウスに関わって、『タイニーハウスとは?』と考えました。江丹別では、予算の上限もありましたが、大きな建物は必要ではなかったので、結果的にタイニーハウスになりました。その地に根を下ろして生活する主たる拠点は『一般住宅』と捉え、それよりシンプルなものは分かりやすく『タイニーハウス』と呼んでいます」

20211122113733-ba93424919292964c3fb0c97a8359ce0c5b40cd8.jpg

松本「2021年10月、東京であった『タイニーハウスフェスティバル』を見学しました。無駄を減らして暮らしの質を高めることが目的であって、小ささは手段なんだなと実感しました。一方で、『どうやって建てたんですか?』『自分でもできますか?』『費用は?』とよく聞かれます。センスの光る、プロの大工さんにお願いしたのでとても自分ではできませんでしたが、手軽に安くできる、というイメージを持たれがちです」

藤原「問い合わせの7割は、一般に販売されているキットを施工してほしい、というご相談です。ただアーケンとしては、ご相談を承った後、単なる施工だけのオーダーになる場合はお受けしていません」

松本「なぜですか?」

藤原「『モノ』ではなく、『コト』から始めたいからです。お客様がどんな暮らしや仕事をしたいのかという『コト』をじっくり聞いて、それに合うものを提案します」

松本「どういうことですか?」

藤原「例えば『木造の小屋を』という希望でも、使い方や予算によってはコンテナハウスの方が合うかもしれません。一方、鉄筋による補強で、コンテナの方が木造小屋より高くなることもあります。費用をかける意味がどこにあるか、何がベストかは、一緒に考えて初めて分かります。お客さまの顔が見えない仕事は難しいです」

松本「確かに、江丹別のパン屋さん『ブーランジェリーaman(アマン)』も、コンテナならではの意味を見出していましたね」

藤原「目立つコンテナというコンテンツの魅力がありますし、飲食のスペースがいらないからこそ、コンテナが生きてきます。何がやりたいかによって答えは変わるので、まず相談していただきたいです」

松本「江丹別以外の案件にはどのようなものがありますか?」

藤原「東川町でセカンドハウスなどを3軒手がけました」

20211122113953-b8cb589ff2be359c3777ca3d75c31bb753c89df7.jpg

松本「用途としては、住宅系が多いですか?」

藤原「必ずしもそうではなく、小型住宅・セカンドハウスは3割といったところです。小規模なお店が4割、趣味のための拠点が3割という感覚で、趣味目的だと、どうしても価格重視になる傾向はあります」

松本「タイニーハウスを建てる時の注意点はありますか?」

藤原「アーケンの場合、山や農地の中など、ロケーションに惚れて希望する方が95%くらいです。ただそういう場所はインフラ関係がよく課題になります。上下水道が来ていないケースは多々あります。地下水の汲み上げや浄化槽の設置は大きな出費で、総額に与える影響は大きいです。土地探しの時に、インフラから調べて検討するのがベターです」

20211122114028-8a8ec1f6685c15d9adf11ac8f960968a47fc5151.jpg

松本「場所にこだわるからこその難しさですね」

藤原「『いくらで建てられますか?』という質問もよくいただきますが、条件によってさまざまです。太陽光発電を希望する場合は蓄電池に、下水がない場所でバイオトイレを置く場合はそのシステムに、コストがかかります。寒冷地の場合、断熱性能にどれだけ投資するかも重要です。よく言われる坪単価の相場も即答しにくいです」

松本「結果的に安くなるなら別ですが、『安いからタイニーハウス』となると、多くの妥協が必要になり、当初の理想とかけ離れてしまうリスクもありそうです」

藤原「小さな住宅を指してタイニーハウスと言う場合、トイレや風呂など一般住宅と変わらない設備が必要です。違いは部屋数が減るくらいで、かえって狭い中に効率良く収めるための手間がかかります。ただ、何でもかんでも費用をかけて作り込むべきだと言いたいわけではありません。釣り道具を保管する小屋なら無垢材までいらないでしょうし、キットが適している場合もあります。目的や、お客さまによってさまざまです」

20211122114115-0d63b8ad3211b20b47b354d334ac4d732c7309a1.jpg

松本「私のゲストハウスでは、テレビをはじめ、一般的なホテル・旅館にある設備はなく、広くもありません。それでも数字に表れない居心地の良さや、ワクワクする感覚、普段と違う視点を楽しんでいただけています。タイニーハウスに惹かれる人は多いと感じます」

藤原「小さい空間で非日常を味わえ、心の満足につながります。一部でもセルフビルドに挑戦しやすいとも言えます。希望される暮らしや使い方を伺った上で、選択肢の一つとしてタイニーハウスがあれば素敵ですね。いろんなアイデアをお示ししていきたいです」

=======================================

『ブーランジェリーaman(アマン)』

〒071-1173

北海道旭川市江丹別町中央121-2

営業時間:10:00~15:00(なくなり次第終了)

定休日:月曜

公式サイト https://www.facebook.com/boulangerie.aman 

『旭川公園ゲストハウス』

〒079-8411

北海道旭川市永山1条24丁目2-4

公式サイト https://asahikawakoen.com/