東京から憧れの北海道に移住し、道内各地のレストランで修業を積んだ田向さん。東川町で2021年にジャム&カフェ「Tam Jam(タムジャム)」は、オリジナルのジャムと東川町をはじめ近隣の市町村や道産の食材、そしてジャムを使ったこだわりのメニューを楽しめるお店をオープンしました。アーケンが設計施工を担当させていただいたお店をご紹介させていただきます。
田畑に囲まれた広い土地に建つTam Jam。カラマツの板張りは、経年による色の変化を楽しめます。
店内に入ると、右手には手作りジャムが置いてあります。すべて北海道産の果物や野菜に、てん菜糖と国産のレモン果汁のみで作られていて、素材の味をそのまま楽しめる無添加ジャムです。東川町産のトマトやブドウから、仁木町妹尾観光農園のブルーベリー、リンゴなど、季節によってラインアップは変わりますが10種類ほど展開されています。
シラカバをイメージして作られたパッケージは、北海道土産としても喜ばれそうなデザインです。 お土産に購入した仁木町妹尾観光農園産の千両梨ジャムは、サラッと塗りやすいピューレタイプ。まるで梨を食べているかのようなザラッとした食感と味わいが印象に残っています。
Tam Jamは、ジャム屋さんがやっているカフェがコンセプト。料理にも手作りジャムが使われています。一番人気のハンバーグにかかっている和風ソースには、隠し味に池田町産ルバーブのジャムが使われているのだそうです。 つなぎにはパン粉の代わりに東川町の宮崎豆腐店さんのおからを使って、ふわふわ食感に。ひとくち頬張ると、スパイスの香りとお肉の甘みがじんわりと広がり、笑みがこぼれるおいしさです。
テーブル席と窓に向かって設置されたカウンター席。
ジャム作りに興味をもったきっかけ
田向さんは、高校生のころから毎年北海道を訪れていました。大好きな馬を見に行ったり、自転車で写真を撮ったり。宿のお母さんにも、山や海やといろいろな場所に連れて行ってもらうなかでハマナスのジャム作りを教えてもらいました。 田向さん 「作ったジャムをお土産で配ったら、みんなに喜んでもらえたのがすごくうれしくて。ジャムって、あげやすいし、食べやすいですよね。あげたり、もらったりとコミュニケーションツールになるのが魅力的だなと思って、ジャム作りに興味をもちました。」
道内各地のレストランで修業を詰んだ20代
田向さんは、北見市で建築系の会社に就職したあと「本当にやりたいこと」を実現するために、帯広の調理師学校で料理を学びました。その後、仁木町やニセコ、池田町など道内各地のレストランを回ります。
かつて北海道を訪れたときによくしてくれた宿のお母さんや宿泊客、道内各地のレストランで修業を積むなかで知り合った人たち、そしてジャム作りでつながった農園の人たち。さまざまな出会いのなかで人と関わる楽しさを感じていきます。
「人との関わりを楽しみながらジャムを作りたい」という夢を叶えるために、自分のお店をもちたいと考えるようになります。
東川を選んだ理由
田向さん 「お店をもつにあたって、視野とつながりを広げるために札幌へ移りました。そこで、妻と出会い、結婚したんですね。そこから、お店をやるための場所を探していて。カフェが多い東川を見に行ったときに、役場の人たちがすごくよくしてくれて。環境もよさそうだったので、東川に決めました。」
奥さま 「東川なら、なにかあったときに旭川も近くて安心ですよね。夫の実家の東京にも旭川空港から直行便で行けますし、わたしの実家の留萌にも近い。子育て環境としても申し分ありませんでした。」
東川で子連れに優しいお店を作りたい
田向さん「子どもをもってはじめて、小さい子を連れて入りやすいお店ってなかなかないことに気づいて。子連れだと周りの目も気になるし、子どもお断りの店も意外と多いんですよね。赤ちゃん連れでものんびり食事を楽しめるように、子連れに優しいお店を作りたいという想いがありました。」
子連れのお客さまの予約が絶えないキッズルームは、田向さんが一番こだわって作ったスペースです。赤ちゃんと一緒でも過ごしやすい座敷タイプで、引き戸を閉めると個室としても利用できます。
子どもに優しいジャム&カフェTam Jamに、ぜひ足を運んでみてください。東川の子育てクーポンも使えます。
ジャム&カフェTam Jam 所在地:東川町西3号北12番地 公式HP:https://tamjam-higashikawa.com/ 営業時間:11:00〜18:00 (L.O.17:30) 定休日:月・火曜日 インスタグラム https://www.instagram.com/tamjam_higashikawa/
店舗兼住宅に優れたアーケンとの出会い
当時は札幌にお住まいだったため、札幌で住宅会社を探していたものの、店舗と住宅の両方ができる会社が見つかりませんでした。そこで、旭川で探したところ、店舗兼住宅の実績が豊富なアーケンと出会いました。
田向さん「はじめてアーケン・藤原さんにお会いしたとき、江丹別のChirai(チライ)さんに連れていってもらいました。そこで、アーケンさんのデザインや施工がすごいとわかりました。また、生産者さんを紹介してもらえるのが魅力でした。地元の食材を使いたい一方で、東川でのつながりはなかったので、すごくありがたいですよね。実際、ジャムに使っているイチゴの農家さんも藤原さんの紹介で知り合いました。」
奥に見えるのは、使いやすさ重視で作った大きめの厨房。客席のカウンターテーブルには、アーケン・藤原さんも参加するシラカバプロジェクトで切り出したシラカバが使われています。田向さんも、ご家族で森に足を運び、シラカバを選び、伐採する経験をしました。
田向さん「普段は絶対にできないことなので、よい経験をさせてもらえました。生産から関わったテーブルに、愛着もより一層わきます。」
生活を支える木の本来の姿や生き様から魅力を再発見し、普段は見られない木こりや家具屋さんの仕事に触れて視野が広がる。アーケンでなければ、なかなか体験できない取り組みです。
床、天井、壁、家具、太い柱以外は、アーケンの提案ですべてシラカバが使われています。壁は全面塗り壁で、清潔感のあるホワイトに統一。店内にも、北海道の豊かな自然を感じます。
東川に住んでみて
夏は、外でも食事を楽しめるウッドデッキ。庭では、ルバーブをはじめさまざまな植物を育てています。2階は居住スペースです。
田向さん「自然豊かな土地でのびのび暮らしていると、東京にはもう戻れないですね。日々変わる景色を見られるのも満足度が高いです。」
田向さん家の娘さんが見つけたカエル。生き物ともふれ合える自然豊かな環境で、のびのびと過ごせそうです。野ウサギがやって来ることもあるのだとか。
田向さんは、手作りジャムの販売とこだわりの道産食材のメニューを提供するお店を実現できました。その陰には、店舗兼住宅を建てるだけではなく、新たな農家さんとのつながりをもたらしたアーケンの存在があります。